今回の要点

  • 運動不足や寝たきりの状態は筋肉量の低下(サルコペニア)を加速させる
やってみよう
  • 指わっかテスト(下図:図はクリックで拡大できます)で筋肉量を評価し、サルコペニアチェックを行いましょう。
    • サルコペニア予備軍と判断された場合は今日から筋トレ(*注1)を始めましょう。

より詳細を知りたい方

サルコペニアは高齢者だけの問題ではない

加齢に伴う筋量と筋機能の低下減少(サルコペニア)は高齢者だけの問題ではなく、健康な成人男女でも観察される状態です。サルコペニアの健康被害については以前のブログをご覧下さい。

こんな状態が筋肉を減少させる

宇宙飛行

宇宙飛行士は、宇宙での無重力の状態に長くさらされるため、その結果として筋肉が宇宙飛行中に激減してしまうことはよく知られています。そのため、宇宙飛行士は宇宙滞在中も筋トレや自転車運動などを実施し、筋量・骨量や体力の維持に努めています。

寝たきり

地上での極端な運動不足状態は「寝たきり」です。ベッドでの寝たきり状態になると、下肢の筋肉は通常の歩行動作などの加重が無くなるので、高齢者の場合、たった10日間で1キロの筋肉(**注2) が減少してしまいます。

つまり寝たきりの状態は筋肉にとって宇宙空間にいるような状況を生み出してしまうのです。

ちなみに寝たきりの状態は、必ずしも病気やケガによる入院に限らず、風邪などで自宅で療養している状態も活動量が極端に減少するので、筋肉量は減少してしまいます。

日頃健康であっても、たまに風邪を引いたり病気をして寝込むことがあると、それが原因で少しずつ筋量が減少していきます。特に高齢期においては、そういった数日間の寝たきり状態や運動不足が続くと、サルコペニアに繋がる恐れがあります。ちなみに、運動不足は死因のトップ4に入る要因です。

なぜ不活動状態で筋肉は急に減ってしまうのでしょうか?

不活動は筋肉にとって最も最悪の状況を作り出します。筋肉を使わない(活動しない)と体は筋肉が必要ない組織であると判断し、筋タンパク質の合成を低下させてしまいます。その結果、若年者であっても不活動は筋肉量の低下を引き起こします。

運動不足

仕事場で長時間座ったままのオフィスワークや、自宅でソファーに寝転がって長時間テレビを見ている状態も不活動にあたります。健康であっても加齢に伴い筋肉量が少しずつ減少する原因の一つが運動不足であることが指摘されています。寝たきりの状態ほどのペースで筋肉量は減少しませんが、習慣的に運動・スポーツを実施している活動的な生活と比較すると、筋肉量の減少は大きくなります。

不活動による筋肉量の減少を防ぐためには、運動(特に筋トレ)の実施が必要です。

あなたは十分な筋肉をもっていますか?

サルコペニアの判断基準として筋肉量を評価するには通常DEXA法と呼ばれる放射線を使った機器を用いた測定方法が精度が高いとされています。しかし、この方法は病院等の特定の施設でなければ実施することができず、一般の方が気軽に家庭でサルコペニアチェックをするには適していません。

よって家庭でもできるような簡易的なサルコペニアのチェック方法が求められるのですが、実は太もやふくらはぎの周囲径はその人の筋肉量を高い相関関係を示すことが報告されています。つまり、ふくらはぎの大きさをテープメジャーで評価すれば、筋肉量の大小を評価できるのです。

日本人のデータでは、男性34cm、女性33cmをサルコペニアのカットオフ値としています。つまり、それよりも値が小さいとサルコペニア、という判断になります。ちなみに、男性37cm、女性34cmがサルコペニア予備軍のカットオフ値です。

指わっかテストでサルコペニアチェック

テープメジャーが手ものにない方も多いと思いますので、より簡単に両手の親指と人差し指で指わっかを作ってみましょう。

ふくらはぎの一番太いところ囲んだ際に、指が重なるとアウト(つまりサルコペニア!)です。ちょうど指が触れるくらいが予備軍、隙間が開けばオーケー(筋肉量が十分ある、という判断)です。

サルコペニアチェックで「サルコペニア」あるいは「予備軍」と判断された方は、今日から筋トレを始めましょう。

今後、このブログでは具体的な運動方法についても紹介していく予定です。

 

*注1:筋トレに取り組みましょう(1セッション30〜45分程度、できるだけ全身の筋肉を使う種目を実施)先ずは週に1回から、慣れてきたら目標として週に2〜3回程度の頻度で実施しましょう。

**注2:レジスタンス運動(筋トレ)で増加できる脚の筋肉量が3か月で平均1キロ程度なので、その苦労がたったの10日間で消滅してしまうことになります。若年者の不活動による筋量の減少は高齢者と比較して約3分の1程度ですが、不活動による筋量の減少は年齢に関係なく観察されます。

参考文献:

  1. Kawakami, R., H. Murakami, et al.: Calf circumference as a surrogate marker of muscle mass for diagnosing sarcopenia in Japanese men and women. Geriatr Gerontol Int, 15(8): p. 969-76, 2015.
  2. Paddon-Jones, D., M. Sheffield-Moore, et al.: Atrophy and impaired muscle protein synthesis during prolonged inactivity and stress. J Clin Endocrinol Metab91(12): p. 4836-41, 2006.