皆さんはこんな経験ありませんか?

「なかなか寝付けない」

「朝、すっきりと目覚めることができない」

「日中に眠気を感じることが多い」

これらは不眠症のサインです。日本人の約20%がこのような症状を訴えています。

厚生労働省の調査によると、1日の睡眠時間が6時間未満と回答した男女の割合は39.5%でした(2015年)。6時間未満と回答した人の割合は2007年には28.4%だったので、睡眠を短時間で済ませる人が年々増えていることが分かります。

また睡眠時間が6時間未満の場合、男女ともに「日中、眠気を感じた」と回答した人が多いことから、より多くの人が睡眠の質の低下を訴えています。

今回のPOINT!

睡眠不足は肥満を引き起こす

筋トレは睡眠の質を改善する

ここからはより詳細を知りたい方のみ閲覧下さい

1.不眠症は病気の原因
・不眠症による健康被害
・睡眠時間と肥満の関係
・不眠症とサルコペニア
2.寝過ぎも体に良くない?適切な睡眠時間を見つけよう
3.運動してぐっすり眠ろう
・どんな運動が睡眠の改善に有効か?
・睡眠の質を改善する筋トレの内容
・運動実施のタイミンには気をつけよう

 

1.不眠症は病気の原因

・不眠症による様々な健康被害

すっきりと目覚めることができなかったり、日中眠くなるような、いわゆる”不眠症”は睡眠障害の一種で、様々な疾患を引き起こします。

睡眠障害は肥満、心疾患、脳卒中、鬱病、死亡リスクなどを増加させ、QOLの低下を引き起こします。

・睡眠時間と肥満の関係

平均睡眠時間が6時間の人は、睡眠時間が7時間の人に比べて肥満になる確率が23%も高く、さらに睡眠時間が5時間の人は50%、睡眠時間が4時間以下の人は73%も肥満になる確率が増加します。

まず、睡眠不足はインスリン抵抗性を引き起こすことから、食後の血糖値のコントロールに障害が起きます。インスリン抵抗性の発症は肥満と糖尿病を引き起こす危険因子です。

さらに、不眠症が肥満を引き起こす原因として、睡眠不足や睡眠の質の低下によって運動量が減少し、エネルギーの消費量が低下することが考えられます。

また睡眠不足に陥ると食欲の抑制を制御するホルモンであるレプチンの分泌が低下し、逆に食欲を増進させるホルモンであるグレリンの分泌が増加するため、不眠症は食べたい衝動をより強くするのです。

つまり睡眠不足になると、消費するエネルギーが減少しているにも関わらず食べる量が増えるため体重が増加するのです。

・不眠症とサルコペニア

適切な睡眠は筋肉を維持し、サルコペニアを予防する観点からも重要です。

動物を用いた不眠の実験で、ラットの睡眠を妨げると、筋肉の分解が高まり、同時に筋肉の合成が低下するため、4日後に著しい筋肉量の低下が報告されています(注1)。つまり寝不足はサルコペニアの原因ともなり得るのです。

2.寝過ぎも体に良くない?:適切な睡眠時間を見つけよう

米国のNational Sleep Foundationは適切な睡眠時間として、18歳以上は7〜9時間、65歳以上は7〜8時間を提唱しています。

国内で10万人近くの中高年者を対象とした研究では興味深い結果が得られています。

7時間睡眠を取った群と比較して、睡眠時間が4時間の群は疾患などによる死亡率が高かったのですが、なんと睡眠時間が10時間以上の場合も死亡率が増加していました。

つまり、7時間の睡眠を取っていた人達が最も健康的であり、睡眠時間が極端に短くても長くても、健康にとってはマイナスの効果があったのです。

しかし、適切な睡眠時間には個人差があり、一般化することが難しいのが現状です。もしあなたが、日中に眠気を感じずにすっきりと過ごすことができていれば、十分な睡眠が取れている、と判断できます。

3.運動してぐっすり眠ろう

では睡眠の質を改善し、翌日すっきりと過ごすために、何をすれば良いのでしょうか?

その答えは、もちろん”運動”です。

・どんな運動が睡眠の改善に有効か?

これまでの研究で、ウォーキングやジョギングなどの有酸素性運動や、長期的な筋トレは共に睡眠の質を改善することが示されています。

・睡眠の質を改善する筋トレの内容

ちょっとキツいと感じる筋トレを週1回実施しましょう

筋トレによる睡眠の質の効果は、運動の強度(運動で使用する負荷重量:ダンベルの重さ)が低くてもその改善効果が認められています。また、運動の頻度も、週1回の筋トレで睡眠の質の改善が認められています(注2)

(過去のブログ:筋トレと運動強度:効果的な筋トレは”ちょっとキツい”で実現できる🔗

・運動実施のタイミンには気をつけよう

ただし、夜遅く(21時以降)に筋トレを実施するのは避けましょう。通常は睡眠の準備段階として体温が徐々に下がりますが、睡眠の準備が整っている時間帯に激しい運動を実施すると交感神経が刺激され逆に体温が上昇し、覚醒度が高まってしまいます

夕方に運動する場合は、あえて最も覚醒している時間帯である17時〜20時に実施しましょう。

筋トレは筋肉の健康だけでなく、健康の基本となる睡眠の質を改善する役割も担っています。

毎日すっきりとした気分で過ごせるように筋トレを実践しましょう。

 

注1:この動物実験では動物のレム睡眠が阻害される結果、筋肉の分解を促進するコルチゾールが増加し、筋肉の合成を誘発する同化ホルモンが減少しました。体重も減少していたことから、この実験モデルは極端な睡眠障害を引き起こしていると考えられます。しかし、臨床試験でも睡眠不足はコルチゾールの分泌を増加させることから、長期的な睡眠障害は筋肉を減少させる可能性が示唆されます。ちなみに、この動物実験による睡眠不足において、実験期間中に筋肉の合成を刺激し、分解を抑制するアミノ酸であるロイシンを投与したところ、筋の萎縮を防ぐことができました。たとえ睡眠不足の状態でも良質のたんぱく質などの必須アミノ酸摂取はサルコペニア予防に重要です。

注2:Kovacevicが過去の13の研究を対象に実施したシステマチックレビューでは、運動強度が高い筋トレほど、睡眠の質が改善することも指摘されています。また運動実施の頻度も週3回が週1回の運動より効果的であり、量依存的な効果が示唆されています。

被験者に1回のみの筋トレを実施してもらった研究では顕著な睡眠の質改善が認められていないため、筋トレを長期的に継続することが睡眠の質改善にも重要であることが分かります。

 

参考文献:

1. Ikehara, S., H. Iso, et al.: Association of sleep duration with mortality from cardiovascular disease and other causes for Japanese men and women: the JACC study. Sleep,  32(3): p. 295-301, 2009.

2. Bonardi, J.M.T., L.G. Lima, et al.: Effect of different types of exercise on sleep quality of elderly subjects. Sleep Med,  25: p. 122-129, 2016.

3. Kovacevic, A., Y. Mavros, et al.: The effect of resistance exercise on sleep: A systematic review of randomized controlled trials. Sleep Med Rev, 2017.

4. de Sa Souza, H., H.K. Antunes, et al.: Leucine supplementation is anti-atrophic during paradoxical sleep deprivation in rats. Amino Acids,  48(4): p. 949-57, 2016.

5. 宮崎総一郎「脳に効く「睡眠学」」角川SSC新書 2010

6. 櫻井武 「睡眠の科学」講談社 2010